親が亡くなったらやるべきこと 期限別手続き一覧【PDF付】

親御さんを亡くされた際に必要となる手続きは多岐にわたり、深い悲しみの中で進行させるのは心身ともに大きな負担となります。しかし、これらの手続きの多くには期限が設けられており、事前に把握しておくことで、いざという時に落ち着いて対処し、不要なトラブルを避けることができます。
この記事では、「親が亡くなった後、まず何をすべきか」を時系列に沿って詳しく解説し、主要な手続きを一覧としてまとめました。

目次

1.【死亡日当日】慌ただしい中でもやるべき4つのこと

親御さんが亡くなった当日は、悲しみに暮れる間もなく対応すべきことがいくつかあります。

死亡診断書の受け取り(コピーの取得)

主治医から「死亡診断書」を受け取ります。事故死や突然死の場合は、警察に連絡し、警察医や監察医から「死体検案書」が発行されます。これらの書類は今後の手続きで何度も必要になるため、必ず複数枚コピーを取っておきましょう。発行手数料は保険適用外で、公的な医療機関で3,000〜5,000円程度、私立病院で5,000〜10,000円程度が相場です。死体検案書の場合は30,000〜100,000円程度かかることがあります。

近親者への連絡

家族、親族、職場、近所の人など、故人と縁の深かった人々に訃報を伝えます。まずは亡くなった事実のみを簡潔に伝え、通夜や葬儀の日程は決まり次第改めて連絡するとスムーズです。電話で伝えるのが正式なやり方とされています。

葬儀社の選定・打ち合わせ

故人の葬儀に関する生前の希望(遺言書やエンディングノートに記載がないか)を確認し、葬儀の形式を決め、自分たちに合った葬儀社を選びます。病院が提携している葬儀社を選ぶ方法もありますが、慌てて決めず、まずは遺体の搬送のみを依頼し、その後にじっくり検討することも可能です。葬儀社は、遺体の搬送・安置・納棺、枕飾りの設置、通夜の設営・進行、僧侶の手配、棺・霊柩車・火葬場の手配など、多岐にわたるサポートを提供してくれます。

遺体の搬送、退院の手続き

病院での遺体安置は数時間程度が一般的なため、自宅や葬儀社の安置場所へ速やかに搬送します。入院費の清算など、退院手続きも同時に行うため、必要な費用を用意し、費用負担について近しい人と事前に話し合っておくとトラブル防止に繋がります。

2.【2日目】死亡届の提出と通夜の準備

死亡後の手続きの中でも、特に期限が短く重要なのが死亡届の提出と火葬許可証の取得です。

死亡届の提出、火葬許可証の取得

死亡届は、死亡診断書と同じ一枚の用紙になっていることが多いです。届出人(同居する親族、親族以外の同居者など)が必要事項を記入し、死亡を知った日から7日以内に以下のいずれかの役所へ提出します。

  • 死亡者の本籍地
  • 届出人の住所地
  • 死亡した場所

火葬許可証は、死亡届を提出する際に役所で申請し、同時に取得することが必須です。火葬は死亡後24時間以上経過している必要があるため、2日目に取得しておきましょう。これらの手続きは、多くの場合、葬儀社が代行してくれますので、事前に確認しておきましょう。

通夜

通夜は、家族や親族が故人と最後の夜を過ごす儀式です。通常、葬儀社を介して行われ、準備や手配のほとんどを任せることができます。喪主は、参列者の出迎え、代表挨拶、見送りなどを行います。地域によっては「通夜振る舞い」という飲食をふるまう風習もあります。通夜終了後には、翌日の葬儀について葬儀社と打ち合わせを行います。

3.【3日目】葬儀と火葬、初七日法要

通夜に続き、葬儀と火葬、そして初七日法要が行われます。

葬儀、出棺、火葬

葬儀は、通常、通夜の翌日(死亡から3日目)に行われます。葬儀社が主導で進めますが、家族や地域の風習に応じて内容を話し合って決めます。火葬は基本的に葬儀と同日に行われます。この際、喪主は必ず火葬許可証を持参する必要があります。持っていない場合は火葬が受け付けられない場合があります。火葬は1時間ほどで終わりますが、親族が集まるため、この待ち時間に次回の法要日程などを話し合うこともあります。

火葬済の証明の取得

火葬が終わると、骨壺とともに「火葬執行済の印が押された火葬許可証」が火葬場から渡されます。
この「押印済の火葬許可証」は納骨の際に必要となります。納骨は四十九日法要と合わせて行われることが多いため、それまで自宅で大切に保管し、念のためコピーを取っておきましょう。万が一紛失しても、5年以内であれば役所で再発行手続きが可能です。

初七日法要

本来は死亡から7日目に行う法要ですが、近年では葬儀と同日に済ませるのが一般的です。会場や僧侶の手配、参列者の選定、引き物や精進落としの手配などが必要ですが、多くの場合、葬儀社がまとめて対応してくれます。

4.【5~7日目】葬儀後の精算

葬儀が滞りなく終わると、費用に関する手続きに進みます。

葬儀代の支払いと領収書の取得

通常、葬儀から約1週間後に葬儀社から請求書が発行されるため、葬儀代を支払います。
故人の預金口座から支払う場合、銀行に死亡の旨を伝えると口座が凍結され、引き出しができなくなるため注意が必要です。故人の預金は相続財産となるため、後々のトラブル防止のためにも、あらかじめ相続人全員に引き出す旨を伝え、了承を得ておきましょう。
支払後は、葬祭費の支給申請手続きに必要となるため、必ず領収書を保管しておきましょう。

5.【10日目(目安)】役所での故人の諸手続き

死亡後10日以内が期限の手続きがあるため、この時期に役所や年金事務所などでの手続きをまとめて行います。

亡くなった人の本籍地の役所での手続き

除籍謄本(死亡の事実が記載された戸籍)を取得します。これは今後の相続手続きや相続人の特定に不可欠な書類です。相続手続きには、故人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本や、相続人全員の現在戸籍が必要になることが多いため、取得できるものは全て取得しておくと手間が省けます。提出先によっては返却されない場合があるため、死亡の記載がある除籍謄本は2~3枚取得しておくことが推奨されます

亡くなった人の住所地の役所での手続き

複数の窓口で手続きが必要です。

・住民票の除票の取得

・健康保険証の返還、資格喪失届の提出

国民健康保険・後期高齢者医療保険の場合は死亡後14日以内、健康保険の場合は5日以内。

・介護保険証の返還、資格喪失届の提出

死亡後14日以内。故人が65歳以上または特定疾病で介護認定を受けていた場合。

・葬祭費支給申請

故人が国民健康保険か後期高齢者医療保険に加入していた場合、遺族は葬儀から2年以内に請求できます。

・高額療養費支給申請

故人が亡くなる前に入院などで高額な医療費を負担した場合、医療費支払いから2年以内に還付申請が可能です。

・住民票の世帯主変更届

故人が世帯主だった場合、死亡日から14日以内に提出が必要です(新しい世帯主が明白な場合や一人暮らしの場合は不要)。
これらの手続きには期限がありますが、過ぎても罰則はありません。しかし、放置するメリットはないため、忌引きなどで時間が取れるうちに手続きを進めましょう。

最寄りの年金事務所での手続き

主な手続きは、年金受給者死亡届の提出、未支給年金の請求、遺族年金の請求です。
年金受給停止手続きの期限は、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。マイナンバー登録済みの場合は受給停止届の提出は省略できますが、未支給年金などの手続きは必要です。人によって必要な手続きや書類が異なるため、事前に年金事務所に電話で確認し、窓口で案内を受けながら手続きすることをお勧めします。未支給年金、遺族年金の請求期限は死亡後5年以内です。

最寄りの警察署での手続き

故人が運転免許証を所持していた場合、最寄りの警察署で運転免許証を返還します。その際は死亡診断書のコピーを持参しましょう。ただし、返還しなくても罰則はありません。

在職中に亡くなった場合

健康保険や年金などの手続きは会社を経由することが多いため、勤務先に死亡の連絡を入れる際に、必要な手続きについて案内してもらうよう申し添えておきましょう。

6.【11~14日目】故人の諸契約の解約手続き

役所や年金の手続きを終えたら、公共料金や各種契約の解約・名義変更を進めます。

公共料金の解約(名義変更)

電気、ガス、水道などの契約について、解約するか名義変更するかを家族と話し合って決めましょう。支払明細に記載されている問い合わせ先に連絡するか、住所地に近い電力会社、ガス会社、水道局に問い合わせます。空き家の場合でも、片付けに時間がかかりそうなら、いったん相続人の名義に変更して利用できるようにしておくことをお勧めします。

電話、インターネット、テレビ等の解約(名義変更)

故人の契約先を支払明細や請求書で確認し、死亡を連絡して指示を受けます。

  • 故人の契約先を支払明細や請求書で確認し、死亡を連絡して指示を受けます。
  • モデムやルーターなどレンタルの場合は返却物がある場合も。
  • 携帯電話は、最寄りの携帯ショップでの手続きが多いです。
  • NHKは「NHKふれあいセンター」に連絡します。過払い金が発生していれば返金されることがあります。
  • クレジットカードや月額課金型のサブスクリプションサービス、新聞・雑誌の定期購読、家賃なども、放置すると料金が発生し続けるため、速やかに解約手続きを行いましょう。

生命保険の手続き(死亡保険金)

保険証券で「保険金受取人」を確認し、指定された人が手続きを進めます。
保険請求から保険金が振り込まれるまでに2~3か月かかることもあるため、早めに手続きを進めましょう。請求期限は死亡後3年以内です。入院給付金など、故人自身が請求するもの(=故人の財産)は相続財産となり、死亡保険金とは切り離して相続人が確定した後に手続きすることになります。

7.【14日以降】遺産相続手続きの開始

この段階からは、故人の遺産や権利を相続人が受け継ぐ「遺産相続手続き」が主となります。

遺産相続手続きの大まかな流れ

1.遺言書の有無の確認・検認

自宅や貸金庫、公証役場などを確認。見つかった場合は家庭裁判所で検認を受けます。

2.相続人の確定(相続人調査)

故人の出生から死亡までの戸籍謄本などを集め、相続人を特定します。

3.相続財産の調査

現金、不動産、株式、車、預貯金、借金など、すべての資産と負債を把握し、評価額を算出します。

4.相続方法の決定(相続、放棄、限定承認)

相続放棄

多額の負債がある場合など、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることで、資産も負債も一切相続しないことができます。

限定承認

資産の範囲内で負債を承継する方法。

5.準確定申告

故人が個人事業者だった場合など、所得税の確定申告が必要な場合、相続人が故人の死亡を知った翌日から4ヶ月以内に税務署へ申告・納税します。

6.遺産分割協議書の作成

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決定し、遺産分割協議書を作成します。

7.相続税の申告・納付

遺産総額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人数×600万円)を超える場合、故人の死亡を知った翌日から10ヶ月以内に税務署へ申告・納税が必要です。相続税額がゼロでも特例適用のため申告が必要なケースもあります。

8.相続遺産の分配完了(名義変更等)

遺産分割協議の結果に基づき、不動産の相続登記、銀行預貯金の払い戻しや名義変更、株式や自動車の名義変更などを行います。特に不動産の相続登記は2024年4月から義務化され、基本的に相続から3年以内に行わないと過料が科される可能性があります

8.親が亡くなったらすることリスト(主要な手続きと期限)

手続きの種類内容期限提出先/備考
死亡日当日死亡診断書の受け取り、近親者への連絡、葬儀社の選定、遺体の搬送速やかに病院、親族、葬儀社
~7日目死亡届の提出、火葬許可証の取得死亡を知った日から7日以内役所(葬儀社が代行可能)
通夜、葬儀、火葬通常2日目、3日目葬儀社
~10日目年金受給停止手続き厚生年金:10日以内、
国民年金:14日以内
年金事務所
~14日目健康保険・介護保険資格喪失届、世帯主変更届14日以内(健康保険は5日以内の場合も)役所
公共料金・各種サービスの解約/名義変更厳密な期限なし(早めの対応推奨)各契約会社、役所、保険会社など
~3ヶ月以内相続放棄・限定承認の検討と手続き自分のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内家庭裁判所
~4ヶ月以内所得税の準確定申告・納税死亡を知った翌日から4ヶ月以内税務署
~10ヶ月以内相続税の申告・納税死亡を知った翌日から10ヶ月以内税務署
~2年以内国民年金死亡一時金、埋葬料、葬祭費、高額医療費還付申請など各申請による(死亡日の翌日から2年以内など)役所、年金事務所、健康保険組合など
~3年以内生命保険金の請求不動産の相続登記(義務化)死亡後3年以内(相続登記は2024年4月より義務化、正当な理由なく遅れると過料)生命保険会社、法務局
~5年以内遺族年金、故人の未支給年金の請求、火葬許可証の再発行各申請による(死亡後5年以内など)年金事務所、役所
期限なし相続人・財産調査、遺産分割協議、預貯金・株式・自動車などの名義変更早めの対応推奨金融機関、証券会社、運輸支局など

9.まとめ:専門家への相談で心の負担を軽減

親が亡くなった後の手続きは、項目が多く、それぞれに専門知識や時間が必要となり、大切な人を失った悲しみの中でこれらを全て自分一人でこなすのは非常に大変です。特に、相続手続きの中には複雑なものや、期限を過ぎると不利益を被る可能性があるものも少なくありません。

「なかなか時間がない」「一人では手続きが不安だ」と感じる場合は、行政書士、司法書士、税理士、弁護士といった相続手続きの専門家に相談し、サポートを依頼することを強くお勧めします。専門家は、煩雑な手続きを代行し、的確なアドバイスを提供してくれるため、ご遺族の心の負担を大きく軽減してくれるでしょう。

親が亡くなった後の手続きは、まるで複雑なパズルを組み立てるようなものです。最初はどのピースから手をつければいいか分からず途方に暮れるかもしれませんが、それぞれのピース(手続き)には役割があり、正しい順番と期限を守ることで、最終的に一枚の絵(円満な手続き完了)が完成します。もし一人で組み立てるのが難しいと感じたら、専門家という「パズルガイド」の助けを借りることで、安心して完成まで導いてもらうことができるでしょう。

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