相続人以外の人に財産を遺す場合の注意点とは?

相続が発生した場合、被相続人の課税対象となる財産の総額が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超えていると財産を取得した相続人にどのようになるのでしょうか。相続税がかかります。では、遺言書で財産を取得した相続人以外の人が財産を取得した場合どのようになるのでしょうか。当記事では遺言書で財産を取得した人の取り扱いについて解説します。
遺言書を作成することで相続人以外に遺贈することが可能
相続が発生した場合の遺産の分割については法定相続人全員で相続財産の配分を行います。法定相続人の順位は民法で定められており、配偶者が常に相続人、第一順位が子(亡くなっている場合は孫)、第二順位が親(亡くなっている場合は祖父母)、第三順位が兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)と決まっています。子がいる場合は親や兄弟姉妹が相続人となることはありません。
相続人以外の人は遺産分割の協議に参加することはできませんが、相続人以外の人に財産を遺したいと考えている人は遺言書に相続人以外に相続財産を遺す内容を記載しておくことで、相続人以外の者に財産を遺すことができます。
遺贈により財産を取得する人も相続税の申告が必要
遺言書で相続人以外の人が遺贈により財産を取得した場合でも相続税の申告が必要となります。また、一親等の血族以外の者が財産を取得した時は、税金の額に2割加算して課されるという制度があり、配偶者や子が相続する場合もよりも相続税の負担が大きくなりますし、配偶者控除のような特例も利用することができません。また、代襲相続により相続人となった孫は2割加算の対象とはなりませんが、養子縁組した孫は2割加算の対象となります。
土地・建物などの不動産など、現物資産のみを遺贈する場合は自分が元々保有していた預貯金から相続税を支払う必要があります。相続税の申告には期限があり、被相続人の死亡の翌日から原則10ヶ月以内に税務署に申告書を提出する必要があります。期限内に納付できない場合は、延納という方法もありますが、高い利子税がかかります。
財産の一覧を作成し、どれくらいの相続税がかかりそうか事前に確認してから遺言書を作成するようにしましょう。
また、遺言書には公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、自筆証書遺言の場合、相続発生後、家庭裁判所で検認という手続きを行う必要があり、形式的な不備があると遺言書として利用することができません。一方で公正証書遺言は公証役場で保管し、作成時に遺言書として有効であることが確定しますので、相続人の負担を軽減するために公正証書遺言の作成をおすすめします。
相続人への配慮も必要
理由があり、相続人以外の人に遺贈する場合は相続税だけでなく、相続人と遺贈により財産を取得した受遺者の関係が悪化し、トラブルとならないように心情面での配慮も必要となります。相続が発生した後にトラブルになると家庭裁判所で調停や審判に進む可能性もあり、かなり時間がかかります。
また、配偶者や子には遺留分があり、遺留分を侵害するような内容の遺言を作成しても遺留分相当分の金銭を請求されると遺言書通りに財産を分けることができず、かえって負担がかかる場合もあります。生前に贈与税の基礎控除の枠を利用して贈与を行っている場合も特別受益として遺留分の算定に含まれるので注意しましょう。
不明点がある場合は専門家に相談を
相続の手続き方法や制度は非常に複雑です。特に相続税は期限も短く、各種特例や控除の条件も複雑ですので、自分で確認して正確に税額を計算することは簡単ではありません。遺された家族が一般の人で知識や経験がない場合は、手続や対応に苦労するケースも多いです。
判断に迷う場合は税務の専門家である税理士に相談するようにしましょう。知り合いから税理士の紹介を受けることが難しい場合は、ホームページ等で相続税に強い税理士を探してみるとよいでしょう。
相続が発生する前に遺言書の作成の相談をすることも可能です。遺言書どおりに手続きを行う執行者を事前に定めることも可能です。執行者には税理士や司法書士など専門家を依頼することで、費用はかかりますが、家族の負担を軽減し、スムーズに名義変更の手続きや税金の納付が可能となるでしょう。
初回の相談は無料で対応している税理士事務所・司法書士事務所も多くありますので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。