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相続は多くの人にとって初めての経験であり、相続税の申告には不安がつきものです。特に「税務署はどこまで知っているのか?」「なぜ脱税がバレるのか?」といった疑問は尽きません。実は、税務署はKSK(国税総合管理)システムという巨大なネットワークシステムを駆使し、私たちの想像以上に詳細な情報を把握しています。
本記事では、KSKシステムがどのような役割を果たし、なぜ相続税の税務調査で申告漏れや脱税が見抜かれるのかを詳しく解説します。さらに、税務調査の対象とならないための具体的な対策もご紹介します。
KSKシステムとは、KOKUZEI SOUGOU KANRI(国税総合管理)の頭文字を取った略称で、国税庁事務管理センターと全国の国税庁、国税局(12か所)、税務署(524か所)を専用ネットワークで結ぶ、納税者情報を一元的に管理する巨大なコンピューターシステムのことです。
このシステムは、国民の納税に関する申告内容や実際の納税実績、その他税務に関わる様々な情報を入力・記録し、一元的に管理しています。
開発は平成2年(1990年)に始まり、平成13年(2001年)11月には全国への本格導入が完了しています。開発から30年、導入からも20年以上が経過しており、繰り返し運用改善が施されてきました。
納税者のプライバシー度の高い情報を扱うため、閉域網構成(閉じられたネットワーク)を利用するなど、セキュリティ面には細心の注意が払われています。
KSKシステムは、単に情報を管理するだけでなく、税務行政の根幹となる各種税務処理の高度化・効率化に役立っています。
納税者からの申告書や法定調書、納税に関するデータは国税庁事務管理センターに送られ、KSKシステムを通じて全国の税務署や国税局で共有されます。これにより、税務調査対象者の選定や、滞納整理対象事案の抽出などを自動で行うことが可能です。
所得税、消費税、資産税、法人税、源泉所得税、酒税など、国民が支払っている税金がほぼ全て記録されています。ここでいう「資産税」とは、固定資産税のことではなく、相続税や贈与税、譲渡所得にかかる所得税などを指します。
「なぜ脱税がバレるのか?」という疑問に対する結論は、「お金の流れを把握しているから」に他なりません。KSKシステムの運用実績は20年を超えており、過去20年以上前のお金の流れを遡って確認することが可能です。
税務署の情報収集能力は非常に優れており、以下のような様々な情報源からデータをKSKシステムに蓄積し、税務調査に活用しています 。
特定の被相続人の所得税・固定資産税などの過去の申告データ、過去の確定申告のデータ、給与の支払調書、株式や不動産の取引情報などを調べることができます。
お給料を受け取ると所得税がかかり、何かを購入すると消費税がかかるように、税金はお金が流れる様々な場所に発生し、そのデータはKSKシステムに蓄積されます。収入が少ないにもかかわらず、クレジットカードの決済額や高額商品の購入額が大きい場合など、収入と支出の乖離が大きいと違和感として感知されます。
市町村長は死亡届が受理された場合、その情報を所轄税務署長に通知することが義務付けられています(相続税法第58条)。これにより、税務署は被相続人の死亡事実を把握します。
市区町村が徴収する固定資産税や都市計画税に関する情報(住民が所有する土地や建物、固定資産税評価額など)も税務署と共有されます。
各種の銀行をはじめとする金融機関や保険会社などに対し、税務署は預金や取引明細を照会することができます。これにより、被相続人がどの金融機関にどれだけの預金を有していたか、いつ、いくらが引き出され、誰から入金があったかといった金銭の授受に関する情報が筒抜けになっています。特に相続税の申告では、亡くなった方の預金口座の過去数年間の入出金取引を銀行に提出させる「銀行調査」が頻繁に行われます。
税務署は国外送金等調書で100万円を超える高額な海外送金を把握できます。また、国外財産調書の提出義務化などの制度もあり、国外財産を保有する人を重点的に調査対象としています。
税務署は脱税の疑いがある人のSNS履歴をチェックすることもあります。
国税庁のWebサイトには脱税の告発・情報提供を行える窓口が設置されており、これらの情報が調査のきっかけになることもあります。
インボイス制度導入により、品目を含めて物品を購入した際の記録が残されるようになりました。
金地金(ゴールドバー)の売却時には本人確認が徹底され、そのデータが税務署に共有されます。
相続税申告における資産隠しについても、被相続人が所有していた財産だけでなく、相続人の相続後のお金の流れも監視対象となります。申告した預貯金が少ないにもかかわらず、相続後にお金遣いが派手だったりすると、すぐに税務署が感知する可能性があります。
このような強力な情報網があるため、「黙っていれば税務署は分からない」「このくらいは大丈夫」という考え方は通用しないと認識すべきです。過少申告や無申告が発覚した場合、延滞税や加算税が加算され、悪質な場合には重加算税が課されることになります。さらに、刑事罰(10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または懲役と罰金の併科)が科される可能性もあります。
KSKシステムは、税務署側の業務効率化だけでなく、実は納税者側にもメリットをもたらしています。
納税者が申告した内容がシステムに迅速に反映されます。
払いすぎた税金の還付金を受け取る際の振込が、システム導入前よりも迅速に行われるようになりました。
納税証明書の発行もスムーズに行えるようになりました。
税務署から送付される「相続税についてのお知らせ」などにより、納税者自身が把握していなかった財産を認識するきっかけとなる場合があります。
相続税の申告・納付後、約1割が税務調査され、税務調査を受けた約8割以上の人が追徴課税を受けています。これは、税務調査が入ると非常に高い確率で申告漏れなどが見つかることを意味します。
追徴課税になる最大の理由は、ズバリ「過少申告」です。これは、相続する財産を全て申告できていないことが大きな要因として挙げられます。適切な申告が行われていれば、仮に税務調査が行われたとしても追徴課税が発生することはありません。
特に以下のケースが過少申告の事例として該当しやすく、税務調査の対象となりやすい傾向があります。
相続税の基礎控除額の範囲内であれば申告や納税は不要ですが、控除や特例を使用せずに相続財産の額が基礎控除額内に収まっている必要があります。申告が必要なのに無申告で相続税申告期限の10ヶ月を過ぎてしまうと、税務調査や追徴課税の可能性が非常に高くなります。
暦年贈与の場合、被相続人が亡くなる7年前までの贈与は相続税申告時に申告が必要です。贈与契約書や贈与したことが分かる通帳など、贈与の証拠を残しておくことが重要です。
口座が子どもの名前で登録されていても、被相続人が管理し、子どもが口座の存在を知らなかった場合などが該当します。実質的に被相続人の口座とみなされ、相続税の課税対象となります。自身が知らないうちにできていた口座がないか確認し、残高証明書を発行して申告書に記載しましょう。
自宅以外の不動産を把握できていないケースがあります。確認方法として、不動産が存在する可能性のある各市町村に「名寄帳(なよせちょう)」を請求したり、固定資産税の納付書を手がかりにしたりすることが有効です。
暗号通貨も相続税の課税対象です [22]。被相続人が口座を開設して購入していても、相続人が知らない場合があります。メルカリなどでビットコインがもらえることもあるため、被相続人が所有していたスマートフォンのチェックも推奨されます。
海外にある不動産や預金も相続税の対象です。漏れなく記載する必要がありますが、二重課税を避けるために外国税額控除が適用される場合があります。
税務調査で申告漏れなどを指摘されると、相続税に加えて加算税や延滞税を納めることになり、相続人の負担が増大します。税務調査のリスクを減らすためには、事前の対策が非常に重要です。
税の専門家が関与していない申告書は、財産評価や税額計算、特例の適用などに不備がある可能性が高いと見なされます。
相続税は高額になりやすいため、税務調査の対象にされやすい傾向があります。特に遺産総額が2億円を超える場合は、疑わしい点がなくても積極的に調査が行われる傾向にあります。
税務署は国外財産を保有する人を重点的に調査対象としています。
KSKシステムで把握されている生前の収入に比べて相続財産が少ない場合、名義預金や申告漏れが疑われます。
パート収入や年金収入のみの配偶者や、子ども・孫名義の預貯金や有価証券が多額にある場合、被相続人の収入で形成されたものではないかと疑われることがあります。
過去の預貯金の入出金状況から手許現金の財産計上漏れなどが指摘されることがあります。特に相続開始直前の高額な預金引き出しは、現金として財産計上されていない場合に税務調査の対象になりやすいです。
不動産売却による高額な金銭に対応する相続財産が申告書に記載されていない場合、申告内容に疑義を持たれる可能性が高まります。
通常、借入は財産を取得するために行われるため、借入に対して財産が少ない場合は計上漏れの疑いを持たれます。
過去の預貯金入出金状況から贈与税申告が必要と想定される相続人がいる場合、相続税の税務調査時に贈与税の申告漏れや贈与の不成立が指摘されることがあります 。特に住宅取得等資金贈与を受けたにもかかわらず、贈与税申告を行っていないケースは注意が必要です。
相続時精算課税制度を選択した方が、その選択以降に受けた贈与を相続税申告書に計上していない場合、税務調査が行われます。
税務調査で申告漏れなどを指摘されると、相続税に加えて加算税や延滞税を納めることになり、相続人の負担が増大します。税務調査のリスクを減らすためには、事前の対策が非常に重要です。
最も重要なのは、相続税の申告に漏れやミスがないかを確認し、正確に申告・納税することです。相続財産が多いほど、財産評価や税額計算が複雑になり誤りが生じやすいため、複数回チェックし、不安な場合は税理士に依頼するのが良いでしょう。
相続人が被相続人の財産を正確に把握していないことが申告漏れの原因となることがあります。配偶者でも知らない預貯金口座や、お金の貸し借りがあるケースもあるため、生前から被相続人に財産目録を作るよう働きかけるなど、財産をできるだけ把握するよう努めましょう。
税理士が関与した申告書には税理士の署名が入るため、税務署からの信頼度が高まります。
専門的な知識が必要な相続手続きにおいて、税理士は財産の把握から遺産配分の決定、期限内の手続き完了までをサポートします。相続税を抑えるための特例(例:小規模宅地等の特例、配偶者控除)の適用条件や複雑な手続きについてもアドバイスし、節税につなげてくれます。
税務調査に慣れた税理士に同席してもらうことで、調査中の振る舞いや対応での失敗を防ぎ、不必要な情報提供を避けることができます。
生前贈与で財産を移した場合、それが贈与であることを証明できるように、贈与契約書を作成したり、銀行振込を利用して証拠を残したりすることが有効です。現金の手渡しは記録に残らないため注意が必要です。
相続について、被相続人と相続人との間でやり取りがあった場合、口約束ではなく、記録として残しておくことが重要です。誰が何をもらったのか、どのくらいもらったのかが証明できないと、税務署から疑われる可能性があります
申告内容について、金融機関が発行する残高証明書などを添付することで、申告書記載内容の信憑性が高まります。お金の流れや使途に関して証明書を添付できない場合は、「事情説明書」を添付することも考えられます。
相続財産の額やその流れに直接関係のない情報は、敢えて申告書や事情説明書に記載する必要はありません。余計な情報があると、それに基づいたお金の流れを税務署が疑い、調査のきっかけとなる可能性があります。
相続財産について正確な情報を収集し、適切に表示することで、「相続財産をしっかり把握・管理している」という印象を税務署に与えることができます。相続財産の調査内容や経緯について説明資料を作成・添付することも有効です。
KSKシステムは、全国の税務署と国税局を結び、納税者の申告や納税に関するあらゆる情報を一元的に管理する、国税庁の強力な情報基盤です。このシステムにより、税務署は私たちのお金の流れや財産の状況を詳細に把握し、税務調査の対象者の選定や申告漏れの摘発に活用しています。
特に相続税においては、被相続人の死亡情報から始まり、過去の所得、金融機関の取引履歴、不動産情報、さらには海外資産や生前贈与の実態まで、多岐にわたる情報がKSKシステムを通じて分析されます。そのため、「相続を隠し通せば税金を払う必要がない」といった考え方は非常に危険であり、過少申告や無申告が発覚した場合には、加算税や延滞税、場合によっては重加算税や刑事罰といった重いペナルティが課されることになります。
しかし、このような税務調査のリスクは、正確かつ適切な申告を行うことで大きく減らすことができます 。被相続人の財産を正確に把握し、生前贈与の証拠を確実に残すこと、そして最も効果的なのは、相続税に強い専門の税理士に依頼することです。税理士は、複雑な相続財産の評価や計算を正確に行い、適用可能な節税対策を提案し、万が一税務調査が入った場合でも納税者に代わって適切に対応してくれます。
相続は予期せず発生するものであり、冷静な判断が難しい状況も多いです。正確な申告と専門家によるサポートを受けることで、不必要な税務調査や追徴課税のリスクを回避し、安心して相続手続きを進めることができるでしょう。