【要注意】夫婦間でも贈与税はかかる?課税されるケース・非課税になるケースを徹底解説

夫婦にとって、財産は二人が協力して築くものという考えが一般的です。しかし、夫婦間のお金や物のやり取りであっても、知らず知らずのうちに贈与税の対象となる行為をしてしまっている可能性があります。民法では、贈与は双方の同意によって財産権を無償で譲り渡す契約と定義されており、夫婦間でも財産を無償であげる行為は贈与にあたります。

贈与税の申告・納税義務は、財産を受け取った側(受贈者)に生じます。

本記事では、夫婦間で贈与税がかかるケースとかからないケース、および注意すべき事例について解説します。

目次

1. 夫婦間で贈与税がかからないケース(非課税となる財産)

夫婦間の贈与であっても、以下の3つのケースでは贈与税は課税されません。

1-1. 生活費や教育費に充てるための贈与

夫婦間や家族間には「扶養義務」があり、扶養義務者相互間において、生活費または教育費に充てるために行った贈与で、通常必要と認められるものには贈与税の課税は行われません。

  • 生活費の範囲:通常の日常生活に必要な費用(食費、光熱費、家賃など)に加えて、治療費や養育費、子育てに関する費用も該当します。
  • 教育費の範囲:学費だけでなく、教材や文具の購入費なども含まれます。
  • 重要な条件:この扶養の範囲は、あくまで通常必要と認められるものに限定されています。また、生活費や教育費は、必要となる度に銀行口座へ振り込んだり現金を渡したりすることが前提です。

例えば、専業主婦の妻が着る服や装飾品、資格の勉強や旅行、映画鑑賞などの生活上の出費は、夫婦間の扶養義務の範囲内に該当します。妻の病気の治療費や通院費、入院費が高額になり、夫の口座から支払われたとしても、通常必要と認められる範囲であれば贈与税の問題は生じません。

ただし、高額な化粧品やエステ代、あるいは家族が誰も飲まないのに数十万円もするワインを毎月購入するといった嗜好品にあたる高額な出費は、「通常必要と認められるもの」の範囲を超え、贈与税が課税される可能性があります。

1-2. 年間110万円以下の贈与

贈与税には年間110万円の基礎控除額があります。その年の1月1日から12月31日までの間に受け取った贈与財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は課税されず、申告も不要です。

この基礎控除は、夫婦間だけでなく、親やその他の人から受け取った贈与財産の合計額が対象となります。

1-3. 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)を利用した居住用財産の贈与

婚姻期間が20年以上続いている夫婦間であれば、特例として「贈与税の配偶者控除」(通称:おしどり贈与)を適用できます。

この特例を活用すると、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与について、基礎控除110万円と合わせて最大2,110万円まで贈与税が非課税になります。

適用を受けるための主な要件は以下の通りです。

  1. 婚姻期間が20年以上であること。
  2. 贈与財産が国内の居住用不動産またはその購入資金であること。
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産に現実に住み、その後も引き続き住む見込みであること。
  4. この配偶者控除を初めて利用する夫婦であること。

ただし、この特例を利用した場合でも、贈与税額がゼロになっても申告手続きが必要です。

2. 夫婦間で贈与税がかかる要注意なケース(よくある事例)

生活費や教育費以外での高額な金銭や物のやり取りは、夫婦であっても贈与税の対象となる可能性があります。

2-1. 夫(妻)の資金で不動産を共同名義登記した場合

不動産を夫婦で共同所有する際、購入資金の負担割合と登記上の所有権の割合(持分)が異なると、贈与税の課税対象となります。

例えば、3,000万円の住宅を夫が単独でローンを組んで購入したにもかかわらず、登記を夫1/2、妻1/2の持分で行ってしまうと、妻が登記した部分(1,500万円分)は夫から妻への贈与と見なされ、贈与税が発生します。この場合、妻に450万5,000円もの贈与税が課税される可能性があります。

購入の際に負担した金額に応じた持分で登記を行う必要があります。

2-2. 住宅ローンを名義人でない配偶者が返済した場合

夫名義で組んだ住宅ローンを妻のお金で返済した場合も、贈与税が発生します。これは、妻が夫にローン返済分を贈与したと見なされるためです(年間110万円を超える場合)。妻の口座から引き落とす形をとったり、妻が夫にローン返済分を渡したりすることも同様です。

また、妻が親から相続した資金を夫のローン返済に充てた場合も、妻から夫への贈与となり、夫に贈与税が課税されることがあります。

2-3. へそくりで高額な物品や金融資産を購入した場合

専業主婦が生活費を切り詰めて貯めた「へそくり」は、すぐに贈与税が課税されるわけではありません。しかし、へそくりが高額な物品や金融資産(有価証券、株など)の購入費用に充てられた場合、その原資は夫のものと見なされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。

例えば、年間110万円を超えるへそくりで妻が数千万円の有価証券を購入した場合、贈与税が課税される可能性があります。また、へそくりは、生活費を渡していた配偶者(夫)の相続が発生した際に、名義預金とみなされ、相続税の課税対象となります。名義預金には時効がないため注意が必要です。

あわせて読みたい
名義預金・名義保険に時効はなし?税務調査でバレる理由と適切な相続税対策 「名義財産」という言葉をご存じでしょうか。これは、被相続人(亡くなった方)がお金を出して、孫や相続人名義の預金通帳や保険契約をすることを指します。具体的には...

2-4. 年間110万円を超える高額なプレゼント

日用品以外の高額な物品(不動産、有価証券、車、骨董品、貴金属など)を贈与した場合、年間110万円を超える価値がある物品は贈与税の課税対象となります。

結婚記念日の祝いとして150万円相当の宝石やバッグを妻にプレゼントする行為は、世間一般でいう「慣習に基づく金銭のやり取り」という側面が薄く、社会通念上相当と認められる範囲を超えていると判断され、贈与税が課税される可能性が高いです。

ただし、婚約指輪や結婚指輪などは、慣習に基づく金銭のやり取りという側面が強いため、たとえ高額であっても贈与税は課税されない傾向にあります。

2-5. 保険料の負担者と受取人が異なる保険金の受取り

自分が保険料を負担していない保険金を受け取った場合、贈与とみなされ、贈与税がかかる場合があります。

  • 死亡保険金保険料負担者、被保険者、受取人がすべて異なる場合に贈与税の対象です。
  • 満期保険金や解約返戻金:保険料負担者と受取人が異なる場合に贈与税の対象です。

例えば、専業主婦の妻が契約者(保険料の支払い責任者)である保険契約について、夫が代わりに保険料を支払っていた場合、将来的に保険金が支払われた際に、実質的な保険料の負担者(夫)から保険金受取人への贈与と認定され、受取人に贈与税が課税される可能性があります。

2-6. 夫婦の口座間での多額の預貯金の移動

生活費や教育費以外の目的で、夫婦間で年間110万円を超える預貯金を口座移動した場合、贈与税の課税対象となる可能性があります。

少額のやり取りであれば生活費として問題ありませんが、数百万円、数千万円といった高額な口座移動である場合は、税務署側から贈与を指摘される可能性があります。

【注意】夫婦共有口座の誤解

税務上、「夫婦共有の口座」というものは存在しません夫名義の口座に夫婦それぞれの収入を半分ずつ入れていたとしても、そのお金は税務上は夫のお金となり、妻名義の口座も同様です。

3. 夫婦間の贈与が税務署にバレる理由

夫婦間における贈与税の無申告は、遅かれ早かれ税務署に発覚します。

3-1. 相続発生時の財産調査

夫婦のどちらかが亡くなり相続が発生した際、税務署は過去の贈与について詳しく調査します。相続時には、過去10年程度まで遡って口座情報が確認されるからです。この調査の過程で、無申告の贈与(へそくりや高額な口座移動など)が明らかになる可能性が高いです。

3-2. 不動産登記

夫婦間で不動産贈与(または名義変更)が行われた場合、法務局で登記(名義変更)をした事実は自動的に税務署に共有されます。税務署は、この登記情報や、有価証券購入時の特定口座年間取引報告書など、様々な資料を元に贈与の事実を把握しています。

贈与税の無申告を指摘されると、追徴課税として延滞税や無申告加算税といったペナルティを課せられてしまいます。贈与税の時効(除斥期間)は原則6年ですが、偽りその他不正の行為がある場合は7年に延長されます。

まとめ

夫婦間での財産の移動は、「生活費・教育費」以外の財産で、年間110万円を超える高額な財産を無償であげる時は、贈与税の対象となります。

特に、不動産の共有登記における負担割合と持分割合の不一致や、高額なプレゼント、そして名義保険には注意が必要です。

夫婦間の贈与税の課税を回避するためには、高額な贈与を行う際は「贈与税の配偶者控除」(おしどり贈与)のような特例の利用を検討するか、年間110万円の基礎控除枠を超えない範囲で贈与を行うようにしましょう。


相続・贈与の専門家なら「税理士法人とおやま」にご相談ください

夫婦間での贈与や将来の相続対策についてご不安やお悩みがある方は、税理士法人とおやまにご相談ください。

税理士法人とおやまには、経験豊富な相続の専門家が対応いたします。国税庁出身の税理士による徹底した品質管理の下、40年の経験と1,000件以上の実績を持つ相続専門集団として、お客様の課題を解決いたします。

税理士法人とおやまの強みとサービス

豊富な実績と専門性: 長年の経験と実績に基づき、相続税の節税対策について具体的なアドバイスをご提供し、税負担を軽減するサポートをいたします。

高品質なサポート: 国税OBの知見を活かし、税務署からの指摘を受けにくい、質の高い申告業務を行います。

多様な相談対応: 相続税申告だけでなく、贈与税申告や生前対策プランのご提案も行っております。

アクセスと利便性: 新宿区高田馬場を拠点としており、池袋や新宿といったターミナル駅からすぐにアクセスできます。土日や平日夜間のご相談にも柔軟に対応可能です。遠方にお住まいの方には、電話やWeb面談によるオンラインサポートも承っております。

相続税申告が初めての方、相続税を少しでも安く済ませたい方、贈与税の特例活用について詳しく知りたい方は、まずはお気軽に初回無料相談をご利用ください。

お電話でのお問い合わせは平日9:00~18:00まで受け付けております。メールでのお問い合わせは24時間受け付けております。

税理士法人とおやまにご連絡ください。

目次