
はじめに|同じ新宿区でも、提出先は二つに分かれます
ご家族が亡くなり、相続税の申告が必要かもしれない。そう考えて調べ始めたとき、まず確認することになるのが「どこの税務署に提出するのか」です。
新宿区にお住まいだった方の場合、新宿区内には新宿税務署と四谷税務署の二つがあり、町名によって提出先が変わります。 しかも新宿3丁目や5丁目のように、同じ丁目のなかで番地によって分かれている場所すらあります。
「新宿区なのだから新宿税務署だろう」と思って書類を持参したところ、実は四谷税務署の管轄だった。あるいはその逆。こうした行き違いは、実際に起きています。申告期限が迫っているときにこれをやってしまうと、精神的にも時間的にも余裕を失います。
この記事では、新宿区内の管轄の分かれ目を町名レベルで整理したうえで、新宿区特有の土地評価の論点までご説明します。
大前提|提出先を決めるのは「亡くなった方の住所」です
一覧に入る前に、必ず押さえていただきたいことがあります。
相続税の申告書の提出先は、亡くなった方(被相続人)が亡くなった時点で住んでいた場所を管轄する税務署です。 申告をする相続人の住所ではありません。
ここは本当に間違えやすいところです。たとえばお父さまが下落合のご自宅で亡くなられ、相続人であるお子さまが千葉県や神奈川県にお住まいだったとします。この場合、申告先はお子さまの地元の税務署ではなく、下落合を管轄する新宿税務署です。相続人が三人いて、それぞれ別の県に住んでいたとしても、提出先は一か所にまとまります。
そしてもう一つ、判断が難しくなるパターンがあります。ご高齢の方が晩年に入院されたり、介護施設に入られたり、お子さまの家に同居されたりして、住民票を移していた場合です。この場合、基準になるのは「ご実家がある場所」ではなく「亡くなった時点で住んでいた場所」です。
長年高田馬場にお住まいだった方が、最後の一年だけ埼玉の施設で過ごされ、そちらに住民票を移していたのであれば、申告先は新宿税務署ではなくなります。逆に、施設に入っていても住民票を新宿区に残していたのであれば、新宿区の税務署が管轄です。
このあたりは形式だけで割り切れないケースもありますので、判断に迷われる場合は早めにご確認ください。
新宿税務署の管轄区域(新宿地区)
所在地:新宿区北新宿1丁目19番3号 電話:03-6757-7776
| よみ | 町名 |
| あ | 大久保1〜3丁目 |
| か | 歌舞伎町1丁目(1番1号・2番〜30番・サブナード1号)、歌舞伎町2丁目、上落合1〜3丁目、北新宿1〜4丁目 |
| さ | 下落合1〜4丁目、新宿3丁目(15番11号・12号、17番5号〜17号、18番〜29番、31番3号〜15号、33番〜38番、サブナード1号)、新宿5丁目(13番6号〜14号、14番5号〜11号、18番6号〜17号)、新宿6丁目、新宿7丁目 |
| た | 高田馬場1〜4丁目、戸塚町1丁目、戸山3丁目(18番・21番) |
| な | 中井1・2丁目、中落合1〜4丁目、西落合1〜4丁目、西新宿1〜8丁目、西早稲田1丁目、西早稲田2丁目(1番26号〜28号、3番〜21番)、西早稲田3丁目 |
| は | 百人町1〜4丁目 |
| や | 余丁町(8番4号〜8番6号) |
四谷税務署の管轄区域(四谷・牛込地区)
所在地:新宿区四谷三栄町7番7号 電話:03-3359-4451
| よみ | 町名 |
| あ | 愛住町、赤城下町、赤城元町、揚場町、荒木町、市谷加賀町1・2丁目、市谷甲良町、市谷砂土原町1~3丁目、市谷左内町、市谷台町、市谷鷹匠町、市谷田町1~3丁目、市谷長延寺町、市谷仲之町、市谷八幡町、市谷船河原町、市谷本村町、市谷薬王寺町、市谷柳町、市谷山伏町、岩戸町、榎町 |
| か | 改代町、神楽河岸、神楽坂1~6丁目、霞ヶ丘町、片町、歌舞伎町1丁目(新宿署管内を除く。)、河田町、喜久井町、北町、北山伏町 |
| さ | 細工町、左門町、信濃町、下宮比町、白銀町、新小川町、新宿1・2丁目、新宿3丁目(新宿署管内を除く。)、新宿4丁目、新宿5丁目(新宿署管内を除く。)、水道町、須賀町、住吉町 |
| た | 大京町、箪笥町、築地町、津久戸町、筑土八幡町、天神町、富久町、戸山1~3丁目(新宿署管内を除く。) |
| な | 内藤町、中里町、中町、納戸町、西五軒町、二十騎町、西早稲田2丁目(新宿署管内を除く。) |
| は | 馬場下町、払方町、原町1~3丁目、東榎町、東五軒町、袋町、舟町、弁天町 |
| ま | 南榎町、南町、南元町、南山伏町 |
| や | 山吹町、矢来町、横寺町、余丁町(新宿署管内を除く。)、四谷1~4丁目、四谷坂町、四谷三栄町、四谷本塩町 |
| わ | 若葉1~3丁目、若松町、若宮町、早稲田町、早稲田鶴巻町、早稲田南町 |
特に間違えやすい四つのポイント
1. 高田馬場は新宿税務署です
高田馬場1〜4丁目は新宿税務署の管轄です。高田馬場は早稲田大学に近く、住所としては西早稲田や戸塚町とも隣接しているため混同されやすいのですが、高田馬場そのものは新宿税務署側になります。
2. 西早稲田は丁目と番地で割れます
これが新宿区で最もややこしい部分です。西早稲田1丁目と3丁目は新宿税務署の管轄ですが、2丁目は番地によって分かれます。 1番26号〜28号と3番〜21番は新宿税務署、それ以外は四谷税務署です。
同じ町名、同じ丁目でも、番地一つで提出先が変わります。西早稲田2丁目にお住まいだった方の場合は、必ず番地まで確認してください。
3. 新宿3丁目・5丁目も番地単位です
繁華街である新宿3丁目、5丁目も、丁目全体が一つの税務署に属しているわけではありません。上の表に挙げた番地は新宿税務署、それ以外は四谷税務署の管轄になります。この地域に不動産をお持ちだった場合は、番地レベルでの確認が必須です。
4. 目白は新宿区ではありません
これは管轄以前の問題ですが、意外に多い誤解です。目白は豊島区にあたるため、新宿区の税務署ではなく豊島税務署の管轄になります。
下落合・中落合・西落合・上落合・中井といった「落合エリア」は新宿区で新宿税務署ですが、駅一つ隣の目白駅周辺(豊島区目白)は区が違います。目白通り沿いは新宿区と豊島区の境界が入り組んでいるため、このあたりに土地をお持ちの方は住所表記をよくご確認ください。
迷ったときの確実な調べ方
亡くなった方の最後のご住所の郵便番号がわかれば、国税庁ホームページの「税務署を検索」で管轄を確認できます。
ただし、これまで見てきたように新宿区は番地単位で分かれる地域があるため、郵便番号だけでは判別できないことがあります。西早稲田2丁目、新宿3丁目、新宿5丁目にお住まいだった場合は、税務署に電話で直接お尋ねいただくのが確実です。番地を伝えれば、その場で回答してもらえます。
新宿区で相続税がかかる方は、決して少なくありません
「相続税なんて、うちには関係ない」と考えておられる方は多いのですが、東京都、とりわけ都心部ではその前提が当てはまらないことがあります。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人がお子さま二人であれば4,200万円。この金額を超える財産があれば申告が必要になります。
新宿区の住宅地の路線価を考えると、ご自宅の土地だけで基礎控除に近づく、あるいは超えてしまうケースは珍しくありません。特に下落合や中落合のように敷地の広い戸建てが残る地域、あるいは西新宿のようにマンション価格が高い地域では、預貯金を合わせると課税対象になる方が相当数いらっしゃいます。
東京都全体の相続税の課税割合は約20%、つまり亡くなった方の五人に一人が課税対象という水準に達しています。全国平均が約10%であることを考えると、東京の突出ぶりがわかります。新宿区はこの東京都のなかでも上位に位置する区の一つです。
「自宅しかないから大丈夫」ではなく、「自宅があるからこそ確認が必要」と考えていただくのが、この地域では現実的です。
エリア別|新宿区で押さえておきたい土地評価の論点
新宿区は狭い区域のなかに、性格の異なる土地が混在しています。エリアごとに注意すべき点が変わりますので、代表的なものを挙げます。
下落合・中落合・中井|広い敷地と、起伏のある地形
このあたりは大正から昭和初期にかけて開発された住宅地で、目白文化村に代表されるように、一区画が広く取られた邸宅が今も残っています。同時に、神田川に向かって下る斜面地でもあり、坂道、擁壁、高低差のある敷地が非常に多い地域です。
相続税の土地評価では、こうした条件が減額の要素になり得ます。地積規模の大きな宅地の評価が適用できるかどうか、不整形地としての補正をどこまで取れるか、がけ地補正の対象になるか。こうした判断の積み重ねで、評価額が一割、二割と変わることがあります。
土地が広ければ広いほど、この差は金額として大きくなります。路線価に面積を掛けただけの評価と、現地を確認して条件を拾った評価とでは、税額が数百万円単位で違ってくることも実際にあります。
高田馬場・大久保・百人町|収益物件と、分け方の難しさ
学生街と繁華街を抱えるこのエリアは、アパート、貸店舗、テナントビルをお持ちの方が多い地域です。
賃貸に出している土地は貸家建付地として評価が下がり、建物も貸家として評価減の対象になります。さらに、小規模宅地等の特例のうち貸付事業用宅地等の適用を検討できる場合があります。これは200平方メートルまで評価額を50%減額できる制度で、要件を満たせば効果は大きいものです。
ただし、収益物件には別の難しさがあります。分けにくいのです。相続人が複数いる場合、とりあえず共有名義にしておくという選択をされる方がいますが、これは後々の火種になりがちです。売却するにも、建て替えるにも、大規模修繕をするにも、共有者全員の同意が必要になるためです。次の世代でさらに相続が起きると、権利者が枝分かれして収拾がつかなくなることもあります。
評価の話だけでなく、誰が何を引き継ぐのかという分割の設計まで含めて考える必要があるエリアです。
西新宿|マンションと、二次相続の視点
西新宿はタワーマンションを含む集合住宅が多く、区分所有のマンションが相続財産の中心になるケースがよくあります。
マンションの相続税評価については、令和6年から評価方法の見直しが行われ、市場価格との乖離が大きい物件について評価額が引き上げられる仕組みが導入されています。以前の感覚で「マンションは評価が低い」と考えていると、想定と違う結果になることがあります。
また、配偶者が相続する場合は配偶者の税額軽減により1億6,000万円まで(または法定相続分まで)は相続税がかからないため、一次相続では税額がゼロになることが多くあります。しかし、そのまま配偶者に集中させると、次にその配偶者が亡くなったときの二次相続で相続人が減り、基礎控除も小さくなって、結果的に一族全体の税負担が増えることがあります。
一次相続の時点で二次相続まで見据えた分け方をしておくかどうかで、最終的な負担額はかなり変わります。
四谷・神楽坂・市谷(四谷税務署管内)|狭小地と、古くからの権利関係
四谷から牛込にかけての一帯は、江戸期からの町割りが残る地域で、間口が狭く奥行きのある土地、路地の奥にある土地、接道条件を満たしにくい土地が多く見られます。
こうした土地は評価上の減額要素になる一方で、実際の売却や建て替えには制約がかかります。評価額は下がるが、換金性も低いという性質があるため、納税資金をどう用意するかという観点でも検討が必要です。
また、この地域は借地権や底地といった古くからの権利関係が残っていることがあります。借地権の評価、底地の評価、地主との関係整理は専門的な判断を要する分野です。
申告期限は10か月|特例を使うには分割が前提です
相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。多くの場合、亡くなった日の翌日から10か月と考えていただいて差し支えありません。
10か月は長いようでいて、実際にはあっという間です。葬儀、四十九日、相続人の確定のための戸籍収集、財産の洗い出し、金融機関への照会、不動産の評価、そして遺産分割協議。特にご家族の間で分け方の話し合いが必要な場合、ここに時間がかかります。
そして重要なのは、税額を大きく下げる特例の多くが、期限内に遺産分割がまとまっていることを前提にしているという点です。
たとえば小規模宅地等の特例は、ご自宅の土地を330平方メートルまで80%減額できる制度です。新宿区のように地価の高い地域では、この特例が使えるかどうかで税額が劇的に変わります。しかしこの特例は、原則として申告期限までに遺産分割が確定していなければ適用できません。
配偶者の税額軽減も同様です。分割が間に合わない場合、いったん特例なしで多めに納税し、後日分割がまとまってから更正の請求で取り戻すという手順を踏むことになります(この場合、期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があります)。
期限まで半年を切っているという方は、できるだけ早くご相談ください。まだ時間に余裕があるうちに動き出せば、選べる選択肢が増えます。
新宿区の相続税申告は、税理士法人とおやまへ
当法人は高田馬場駅から徒歩3分。新宿区内はもちろん、西武新宿線・JR山手線・東西線の沿線各地からお越しいただいております。
相続税申告に携わって40年以上、相続税申告の累計実績は1,000件を超えました。下落合・中落合の広い敷地の評価、高田馬場・大久保の収益物件の分割設計、西新宿のマンションを含む二次相続の設計まで、この地域の土地の性格を踏まえた対応をしております。
初回のご相談は無料です。「うちは申告が必要なのだろうか」という段階のお問い合わせでも構いません。まずはお気軽にご連絡ください。

本記事の税務署の管轄区域は令和8年9月時点の情報です。管轄は変更される場合がありますので、最新の情報は国税庁ホームページでご確認ください。

