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相続が発生し、法定相続人全員で話し合った結果を記載するのが遺産分割協議書です。遺産分割協議書には、誰が何を相続するか詳細に内容を記載することになります。
被相続人の相続財産を単純に分けるのであれば、全員で合意のうえ問題なく分割できることが多いですが、代償金の支払いや不動産の引き渡しが伴う場合は、他の相続人が遺産分割協議書どおりに手続きをしてくれないケースもあります。
当記事では遺産分割協議書が守られない場合の対処法を解説します。
遺産分割協議書とは
まず初めに、遺産分割協議書とはどのようなものかを説明します。
遺産分割協議書とは相続人同士で話し合った結果を書面にしたものです。遺産分割協議書をもとに法務局での登記の手続きや金融機関の名義変更を行うことができる重要な書類です。
遺産分割協議書は後で問題とならないように、相続放棄をした人を除く、法定相続人全員で署名・押印をすることで、全員が納得して意思表示をしたことを証拠として残します。遺産分割協議の結果、全員が納得すれば、必ずしも法定相続割合と近い配分である必要はありません。遺留分を侵害している内容でも本人が納得していれば問題ありません。
遺産分割協議書の中に代償分割の記載がされる場合はあります。代償分割とはアクセスの良い場所に土地がある場合など、財産を分けることが難しい時に、土地が長男が引き継いぐ代わりに長男が次男に金銭で代償金を払うことでバランスをとるような相続方法です。
代償分割により、財産を分ける事例では、長男が土地を取得する代わりに代償金として現金を3,000万円の支払いを求めるというような内容で遺産分割協議書を作成することになります。土地の評価額が大きい場合わけられないので元々保有していた現金を一定額支払うことで土地を相続することを認めるような内容となります。
遺産分割協議書で強制執行が可能?
全員で内容を確認し、遺産分割協議が成立したなかで、遺産分割協議書の中で約束されているにもかかわらず、書かれている内容が守られず、代償金の支払いや不動産の引き渡しを請求しても行われない場合があります。そのような者に対して債務不履行を理由として裁判所で訴訟を起こし、強制執行を行いたいと考える人は多いでしょう。遺産分割協議書に記載の内容が履行されないことを理由に強制執行をする場合遺産分割協議書を作成する際に強制執行認諾文言付きの公正証書で遺産分割協議書を作成しておく必要があります。
しかし、実際に強制執行をいきなりするわけではなく、交渉を行い、調停を申し立てるなどあらゆる手段を行ってから、強制執行を行います。そのため、強制執行が行われる事例は極めて稀なケースです。
遺産分割協議のやり直しは可能?
一度遺産分割協議書で約束されたことを行ってもらえない場合、遺産分割協議をやり直し、遺産分割協議書を無効年として再作成したいと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、基本的に遺産分割協議を行って、配偶者や子、兄弟姉妹などの親族に財産が渡り、それに応じて不動産の登記や相続税の申告書の提出などを既に行っている状況の場合はもとに戻すことに費用や労力がかかります。
全員で合意をすることができれば、遺産分割を再度やり直すことはできますが、実際に手続きをした後で再度やり直すことは難しいでしょう。
遺産を巡って争いが生じた場合は専門家に相談を
遺産を巡って相続人同士でトラブルになってしまった場合、解決するまでにかなりの時間を要する事例が多いです。家族でトラブルとなってしまった例では、当事者同士で話し合いを行うとかえって感情的になり、解決できない可能性もあります。トラブルが生じ、関係が悪化してしまった場合は、手続きを強引に進めるのではなく、弁護士などの専門家を交えて話し合いを行い、慎重に手続を進めるようにしましょう。
また、相続税の申告が必要な場合は期限が、原則被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内と決められており、話し合いが長引いたり、やり直しになると、期限に間に合わせられないことも多くあります。
税金の支払いは国民の義務であり、期限が過ぎることで、特例の利用ができなくなるなど、デメリットも多くありますので、できるだけスムーズに遺産相続の手続きを進めることが必要です。
スムーズに手続きを進めるためには事前にトラブルを回避するための準備も重要です。預貯金や株式、不動産や金などの現物資産も評価額を調査しておき、一覧の表にまとめた上で、遺産分割の方法について遺言を作成しておくことでトラブルを未然に防ぐことが可能です。
不明な点がある場合は、実績のある専門家に気軽に相談し、対処するようにするとよいでしょう。専門家に手続きを依頼することで費用はかかりますが、確実に手続きを進めることが可能です。