
相続が発生すると民法で定められた法定相続人で財産を受けるための話し合いを行う必要があります。
親や配偶者などの相続が発生し、遺産分割協議を行う過程で、協力してもらえない相続人がおり、遺産分割の手続きが進まないということがあります。
相続人の中に印鑑を押してくれない人がいた場合どのように対処すればよいのでしょうか。当記事では遺産の分割で相続人と争いになった場合の注意点や解決方法について解説しますので参考にしてください。
相続手続には実印が必要
相続手続きを進めるためには遺産の分け方について合意し、遺産分割協議書に相続人全員が署名・押印する必要があります。遺産分割協議書自体は実印とは別の認印でも問題ありませんので、必ずしも実印を押す必要はありません。しかし、手続きを進めようとすると不動産の登記や各金融機関の取引の名義変更や銀行口座の解約をする際に実印と印鑑証明書や戸籍謄本等の資料が必要となります。不動産の登記も義務化されていますので、実際に放置していると罰金を取られる可能性があります。
相続手続きの各種書類に実印が必要です。先に印鑑登録をしていない人が平日は仕事が忙しく土日には手続きができないなどの理由で、印鑑登録ができず、書類に印鑑を押すことを拒否される事例もあります。それぞれの主張があわず同意を得ることが難しく、困って書類を偽造する人もいますが、かえってトラブルになりますので絶対に避けた方がよいでしょう。
他にも認知症や体調の問題で法律行為や手続きができない場合やそもそも配分に納得がいかず、手続きに協力してくれない場合などがあります。相続が発生した後は相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内に提出する必要があるなど期限があるものも多く、相続財産の調査や名義変更等順次手続きを進める必要があります。相続発生後は何かと忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。基礎控除以下であれば相続税の申告は不要ですが、財産の承継手続きは必要ですので、なるべく早く手続きを進めた方がよいでしょう。
相続放棄をしてくれれば、法的に相続する権利を失いますので手続きを進めることが可能となりますが、遺産を取得する意思がある相続人がいる場合は、手続きを進めることができません。
家族が死亡した後に手続きに協力してくれない家族が一人でもいると手続きが進まないため、連絡先が分からない場合は戸籍から相手方の自宅の住所をたどって書類などを送付して手続きを進めるよう依頼する必要があります。
弁護士に相談する
何度依頼をしても手続きに応じてくれない場合や、他の相続人との関係がこじれてしまい、手続きが進められなくなった場合でも勝手に相続放棄をしたものとして手続きを進めることはできません。
被相続人の財産を誰がどのような割合で配分するか全員で合意をして遺産分割協議が成立しないと手続きを進めることができません。相続が発生したことを金融機関に連絡すると預金口座が凍結されてしまいますので、相続人が協力してくれない場合は日々の支払いにも困るケースがありますし、固定資産税なども誰かが支払う必要があります。
自分で手続きが進めることが難しい場合は法律の専門家である弁護士が所属する実績のある法律事務所に相談し交渉するようにしましょう。トラブルになった時はまずは弁護士を交えて冷静に交渉を行わなければいけません。結果的にそれでも意見がまとまらず解決できない例では、家庭裁判所での調停委員が間に入る調停や審判に進み、財産の内容や状況をふまえて適切な配分が判断され決定されます。
双方が配分に納得がいかない場合は、裁判所での対応とならざるを得ない場合もありますが、裁判所での決着は時間もかかるので双方に負担がかかります。
事前の準備が重要
トラブルを避けるために、事前の準備が重要です。相続人が多く、話し合いに時間がかかりそうな場合や関係が悪く、トラブルになりそうな場合は相続が発生する前に総勢の計算などのシミュレーションを行ったうえで遺言書を作成し、事前に準備しておくことが重要です。
事前に分割の方法を決めておくことで、亡くなった後で兄弟などで話し合って決める必要がなくなり、スムーズに手続きができるでしょう。
遺言の作成をする際は様々な注意点があり、書き方を間違うと無効になる可能性があります。
知識が無い一般の人が行うことは簡単ではありません。例えば、遺留分がある者の遺留分を侵害するような内容を記載することで、遺留分を請求されてかえってトラブルになるケースがあります。特に東京や大阪などアクセスの良い場所に不動産を所有している場合、法定相続分どおりに分けることは難しくなります。
不動産を共有にしないと遺留分を侵害してしまう可能性がありますし、共有にすると相続発生後に活用する際に不都合が生じる可能性がありますので財産の内容と配分した時の影響を確認しておく必要があります。
他にも親族に現金を生前贈与をした分を特別受益として考慮しなかったことや介護による寄与分が考慮されておらず遺言を開示したあとにトラブルになることもあります。
そのため、内容についても税理士や司法書士などの専門家と相談して進めることをおすすめします。作成を依頼する場合は費用がかかりますが、初回の相談は無料で行っていることが多いので、まずは電話やメールなどで気軽に相談していただくとよいでしょう。また、遺言通りに手続きを行う執行者を専門家に任せることで、相続人の負担を大きく軽減することができます。
相談に行く際は財産の内容を把握しやすくするために預貯金や土地・建物など財産の評価額をまとめた一覧を作成していくとよいでしょう。税理士に相談する場合は節税の提案をもらうことができます。配分によって特例の利用可否も異なるので、ポイントをおさえて節税についてもアドバイスをもらいましょう。
家族の中に知識がある人がいない場合は専門家のサポートを受けて最新の情報を得て検討するようにしましょう。